そしてこれこそが環境の違いというものだろう。
彼が知っていた犬といえば、小型犬で常に吠えているようなやつで
さらに言うと何かにつけて噛むようなもののことで
だから大型犬はその大きいヴァージョンだと思っていたそうだ。
彼は言う。
「何か気に入らないことがあれば
すべての問題は噛んで解決する奴らだと思っていたよ」
そんな彼が、いくら子供とはいえ大型犬であるぐりさんを
今どうしてこんなに好きかと言えば
まあぐり自体が妙に引きのある犬で
近所でもやたらと人気ものだし
ぐりが散歩に来ていると言えば、それを知った御主人が携帯で奥さんに電話をし
「ぐりちゃんが来ているよー」
と連絡を取り、奥さんが走って見にきたくらいだというのを差し引いても
ドッグカフェでキャリアチェンジ犬のアモ君と知り合ったことが大きいと思う。
アモ君はでかい。
本当に山みたいだ。
そして何より穏やかだ。
そのアモ君がのっそり足下にやってきて、
背中を見せて「ごろん」と横になったとき
彼の中で何かが変わったようなのだ。
ぐりさんも外ではハイパーで
しっぽをぶんぶん!振り回しては
好きな人には飛びつくし、場合によっては凶器だが
車の中ではいたっておとなしい。
そして彼とぐりを後部座席に乗せて私が車の運転をしていたとき
二人の間には何か秘密の交流みたいなものがあったようなのだ。
そして
「大型犬はどっしり構えているし、
きちんとしつけを受けている個体はめったなことで噛んだりしない。
何より人間が好きで、親切な生き物だ」
という認識が生まれたようなのだ。
すごいなあ、ぐりちゃん。
人の中の大きなものを変えてしまったよ、君は。
ぐりは盲導犬パピーで、将来適性があればユーザーさんのパートナーになり
生活をうんと助けて役に立ち、愛されるだろう。
それでいて、もうそれとは全然関係ないところで
既にいろいろな力を発揮している。
ぐりは本当に素晴らしい犬だ。
そしてぐりも自分が素晴らしい犬であることを
とっくに知っているだろう。
絶賛されつつ、ぐりは今日も元気で暮らしています。