これは私の母の話。
子供の頃から犬をかわいがるとか
庭にやって来るすずめに餌をやるとかは
周りが普通にやっていたので
自分の家族が、かなりの動物好き、しかもばかがつくくらいの
ということに気付くのに
随分かった気がします。
私の家の庭には鳥用の餌台があり
それだけだったら別に普通なのですが
冬の札幌では雪がじゃかすか降るので
この季節
腰のあたりまで積もった雪をかきわけかきわけしなくては
餌台までは、まるでたどりつけない。
そこを無理してでも雪山をこぎこぎ餌をやりにいく根性は一体?
さらに庭の木にりんごをつき刺して
まるでりんごがなっている風かにまで演出するアイディアはどこから?
そして…毎月鳥専用に安い米を買ってきて
絶えずストックしておく気遣いまで。
そこまでして鳥を養わなくてもいいのでは…野性のものだしと
私などは思うのだけれど
よく観察していると
母は特別スズメをかわいいと思っているとか
鳥を好きだというわけではなく
ただ、庭に生き物がやってくるのがおもしろくて仕方がないようです。
「最近、悪い奴がいてさ。
それはヒヨドリなのだけれど、スズメとか他の鳥を威嚇して
絶対に餌台に近づけないわけ。
にくたらしったらありゃしない」
ある朝、母がそういうのを聞いていた私は
その続きを聞いて、思わず飲んでいた茶を噴出しそうになった。
「だからその鳥が来た時にね、窓をあけて豆をぶつけてやったわけ!」
は?
ま、豆?
「でもさ、ふてぶてしいことに
その鳥はびくともしないわけ」
それで、その豆は当たったのですか。
「当たらないんだけれどねー、でも普通、鳥は
豆なんてぶつけられたら逃げるものじゃない?」
はあ。
いや、鳥食堂の運営にそんなに真剣に取り組んでいるとは
知らなかったです。
そして今度は父が、パチンコで狙って玉をぶつけるとか言い出しているし
何なんだろう、この人たち…。
動物を愛しているのか何だかわかりゃしない、と思いました。